物理教育実践交流会
北理研第4回物理教育実践交流会を下記の日程で行いました。
日 時:2月11日(土) 14:00〜17:00
場 所:札幌啓成高校(物理実験室)
参加者は以下の13名
大野栄三(北海道大学)、長谷川誠(千歳科学技術大学)、今野 滋(北海道大学、東海大学非常勤)、中司展人(butukura)、吉田紀美佳(butukura)、石川昌司、佐藤健、宍戸祐子(札幌啓成)、菅原陽(札幌南陵)、本田貴俊(札幌月寒)、横関直幸(札幌旭丘)、松田素寛(札幌厚別)、田澤英貴(札幌平岡)
1.回転する地球儀(札幌清田高校備品)の構造解明について(札幌啓成高校 佐藤健)
2.鑑賞する物理学(札幌月寒高校 本田貴俊)
3.(1)二つの光源を比較できる直視分光器
(2)LEDスポットライトによるCDの虹
(3)水波のドップラー効果を太陽電池で観測する。
(札幌旭丘高校 横関直幸)
4.(1)渡邊儀輝さんの「薄膜干渉で弱めた波長のエネルギーはどこへ行った?」
(2)「同じ振幅の山のパルス波を重ね合わせると振幅が2倍のパルス波になるが,このとき波のエネルギーは何倍になるのか?」
(札幌啓成高校 石川昌司)
札幌啓成高校 佐藤健
札幌清田高校の鶴岡先生より貴重な備品をお借りし、大変感謝しています。
解説書を見ると磁場と光の作用であるということだったので、以下の2つのことをしてみました。
(1)光をカットして地球儀が回転しなくなることの確認
質の良い太陽電池を備えていて、電気エネルギーに変えていることが推察できました。問題は内部に太陽電池を持っているとすると、光がどのように内部まで達するのか疑問でした。
(2)方位磁石を地球儀に近づけてみました。
南半球付近に近づけると地球儀の回転と共に方位磁石も回転しました。しかし北半球では回転しませんでした。さらに地球儀の北極付近のすぐ真上で方位磁石をちょっと動かすと、NやSが交互にひっぱられて、伏角が生じました。従って地球儀内部に、南半球では地球儀と共に回転する磁石が、北極のすぐ真下では強い磁場を持つ小さめの磁石があることが推察されました。
以上のことから石川先生と考慮の結果、この地球儀はモーターそのものであると結論づけました。普通のモーターは磁石の内部にコイルが入っています。このコイルに電流を流すことによって、コイルが力を受け、コイルが回転します。そして、外側の磁石は動かないように固定されています。我々の結論は、この地球儀は、基本構造はモーターだが、動く、固定の関係が逆になっている。つまり、内部のコイルの動きを固定し、外部の磁石が回転している、というものでした。内部のコイルの動きを固定するために、考えられたのが北極の真下にある少し磁場が強めの磁石だろうということです。この磁石がコイルに固定され、そのN極が地球の磁場の方向に常に向いているため、コイルが固定され、外側の地球儀に貼り付けられている磁石が回転しているのだろうということです。
一応これで説明はつくのですが、光が地球儀の内部にどのように届いているのかがちと気がかりでした。まあ、地球儀の表面が透過性のある材料を、使っていればいいということになるのですが、あまり透過性があるようには見えない、しかも周囲に磁石があるなら、光を通す磁石なんてある?それを確かめてくれたのが北大の大野先生でした。部屋を暗くして、電球を近づけてみると、なんと地球儀の北半球が透けて内部がうっすら見えるではありませんか!しかも北極の真下あたりには磁石らしいコロンとした物体の影が!!(写真では確認しずらいですが)完全に解明できた気がしました。考えた基本構造は図の通りです。
なお補足ですが、角運動量が保存されるから、内部のコイルも回ってしまうのでは?という疑問もあるかもしれませんが、北極下の磁石は地球磁場との間で互いに作用・反作用の遠隔力を及ぼし合っていますので、地球儀と地球との角運動の合計が保存されるということは言えますが、地球儀だけの角運動量は保存されません。地球の角運動量は莫大ですので、この地球儀が回転することによってその量がちょっとだけ減ることにはなると思います(笑)。
札幌月寒高校 本田貴俊
物理の楽しみ方として、これまでは実験や観察など体験する物理しか語られてこなかった。しかし、音楽や美術など芸術の分野ではその楽しみ方として、楽器を弾いたり絵を描いたりなど体験型の楽しみ方のほかに鑑賞するという楽しみ方もある。
科学史や科学哲学、また建築やスポーツなどの分野での物理のかかわりなどを授業で取り入れることで物理における鑑賞する楽しみ方の可能性を探った。そして、その授業のスタイルや考え方がサイエンスカフェの考え方と非常によく似ていることに気づいた。
札幌旭丘高校 横関直幸
島津の直視分光器だが普通のものと違い、正面だけでなく側面からも光を取り入れ二つの光源からのスペクトルを比較して同時に観測できるものを紹介。鏡もついており、正面の2光源からの光も取り入れることが可能だが、実際に使用するときは2光源の間につい立が必要であまり使い勝手がよいとは言えないようだ。
最近は1000円以下で、かなり明るいLEDライトが手に入る。直接CDに当てると、壁にリング状の虹が現れる予定だったが何故か失敗。事前に使用したCDと違うものを当日は使用したせいか?CDのトラックではなく、中心付近の溝での回折だった可能性あり。次回、検証予定。
2月に開催された、北理研マルチメディア研究会において紹介されたもの。オリジナルは岐阜物理サークルらしく、電動歯ブラシで発生させた水波をOHPでスクリーンに投影し、スクリーンに張った太陽電池で明暗のノイズ(?)を聞くというもの。
マルチメディア研では、水を入れたシャーレの下に太陽電池をおき、上からペンライトで光を当て、水波による明暗がラジカセから音として観測されるというもの。太陽電池は黒い紙で覆い、2mm四方程度の穴をあけ、一つの波の山谷による明暗を受け取ろうとした。個人的には、あまり上手く音の高低を聞き分けることができず、何かもう一工夫が必要だという印象をもった。
札幌啓成高校 石川先生
北海道の物理教育MLで渡邊儀輝さんが提起していた投稿を,タイトルのように読んだ石川が,例会の参加者と話し合った結果,一応,以下のような結論を得ました。いかがでしょうか。
↓ア↑ウ↑カ ↑コ ------------------------------------------------ ↓イ ↑オ ↓キ ↑ケ ↓サ ------------------------------------------------ ↓エ ↓ク
膜の厚みをd,膜の屈折率をnとし,膜の上下は,いずれも空気(屈折率≒1)とする。
薄膜の真上から波長λの単色光(ア)が膜に垂直に入射したとする。
(ア)のうち,膜の上面での通過光を(イ)とし,反射光を(ウ)とする。
(イ)のうち,膜の下面での通過光を(エ)とし,反射光を(オ)とする。
(オ)のうち,膜の上面での通過光を(カ)とし,反射光を(キ)とする。
(キ)のうち,膜の下面での通過光を(ク)とし,反射光を(ケ)とする。
(ケ)のうち,膜の上面での通過光を(コ)とし,反射光を(サ)とする。
・・・・・・・・・・・・・・・・
エネルギー保存則により,入射光(ア)のエネルギーは,膜に反射される光(ウ),(カ),(コ),・・・・のエネルギーの和と膜を通過する光(エ),(ク),・・・・・のエネルギーの和である。
最初に,2nd/λの値が整数である場合を考える。
このとき,(ウ)と(カ),(ウ)と(コ),(カ)と(コ),・・・・の光の組み合わせはすべて弱め合う干渉となる。
反対に,(エ)と(ク),・・・・・・・の光の組み合わせはすべて強め合う干渉となる。
よって,入射エネルギーは,すべて,膜を通過する光のエネルギーとなる。
次に,2nd/λの値が半整数である場合を考える。
このとき,(ウ)と(カ),(ウ)と(コ),(カ)と(コ),・・・・の光の組み合わせはすべて強め合う干渉となる。
反対に,(エ)と(ク),・・・・・・・の光の組み合わせはすべて弱め合う干渉となる。
このように,反射光と通過光は,互いに相補的な関係にある。
最後に入射光(ア)が白色光の場合を考える。
反射光と通過光は互いに相補的な関係にあるから,反射光のスペクトル分布と通過光のスペクトル分布の和は,からなず入射光(ア)のスペクトル分布に重なる。
また,このことから,反射光のエネルギーと通過光のエネルギーの和は,入射光のエネルギーに一致することもわかる。
以上,証明終わり。
1と類似の問題として提出してみました。すでにこの問題に精通していらっしゃる参加者もいたようですが,石川にはまだちょっと疑問が残ってしまいました。
実は,昔,私は,この問題に一度悩んだことがあって,そのときは,なんとか解決したはずなのですが,そのときどう解決したかが思い出せないのです。というわけで,これは私自身の宿題です。
以上です
Last updated 14 Apr 2006 [ Home ][ Past ][ Future ]
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