2023年第2回例会

写真・文責:今野滋

2023年度第2回物理教育実践交流会が、2023年10月28日(土)、札幌南高等学校にて開催されました。参加者は、芦澤満、飯川大輔、石川昌司、遠藤友祐、今野滋、花光隆太郎、藤村亮太、八若秀俊、吉岡直哉(敬称略、アイウエオ順)の9名でした。

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終了後の情報交換の様子

1. 花光隆太郎先生(伊達開来高校)

誘電体挿入実験

半紙にアルミテープを両側から貼り、平行板コンデンサを作成する。 紙に浸した水の比誘電率を測定する。 コンデンサの容量が測れるマルチメーターが便利。 その他、ブレッドボードを使う工夫など。

半紙に水を付ける前後の静電容量の倍率が、残念ながら純水の比誘電率80.0からは大幅にズレる。 定量的には扱いにくいが、定性的には「誘電率の大きい物質を入れたら容量が増えた」ということはインパクトがある実験。

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花光隆太郎先生

○ 可変コンデンサをマルチメーターに接続。容量は最小。
○ 可変コンデンサの容量を上げる。
○ さらに上げる。
○ アルミテープを半紙の両面に貼って、コンデンサとする。
○ 外から圧を加えると、容量が増す。
○ 鋏んだ半紙に水を含ませると静電容量は20倍程になった。(純水の比誘電率は80程)
○ コンデンサーの放電実験
[ 動画(mp4 3Mb) ]
ボード右上のポッチはスイッチ。
ブレッドボードを使う工夫
  • 導体で繋がっている部分に線を引いて、わかりやすくした
  • 「ベル線-バナナ端子」のコードを作ってマルチメーターと接続しやすくした
○ 静電容量を測定。

2. 石川昌司先生(立命館慶祥中高)

apej誌の右近修治(東京都立大)氏の光電効果に関する紹介論文が衝撃だった

1,箔検電器の実験

授業でよくやられる光電効果の実験。 箔検電器をマイナスに帯電させておいて、殺菌灯を近づけると帯電が解けるというもの。 帯電無しの状態で殺菌灯を泊検電器に近づけただけでは帯電は起こらない。 なぜらならば、金属表面から飛び出した電子が、直ちに金属表面へ引き戻されるから。

ならば、金属表面から飛び出した電子を、以下の手順でプラスの電荷を近づけて引きだしてやろうと考えた。

  1. 箔検電器は最初、ニュートラル ⇒箔は閉じている
  2. プラスに帯電した棒を近づける ⇒箔は開く
  3. 殺菌灯を近づけて、遠ざける  ⇒箔は開いたまま
  4. プラスに帯電した棒を遠ざける ⇒箔の開きは小さくなるが完全には閉じない,つまり箔検電器は殺菌灯によって帯電したことになる

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プラスの電気で電子を引っ張りつつ、紫外線を当てる

2,光電効果の仕事関数について

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ミリカンのプランク定数測定実験に触れ、仕事関数Wの所在を問う。

eV0=hνーW

これは、左図のエミッタE,コレクタCいずれの材質によるのか、あるいは両方か?

右近氏の論文によれば、金属の物性により、これはCのみによるものだという。

「教科書によっては,脚注に『E,Cは同じ金属であるとする』の一文を入れてこの問題を回避しているものもある」との石川先生のコメント。

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板書で説明する石川先生

  1. 光電効果の話題3つ(右近 修治)(ダウンロードは有料)
  2. 高校原子物理では光電効果に関して何を教えるべきか(牛尾 健一)(無料でダウンロード可能)

3. 芦澤満先生(白樺学園)

1,熱したガラスが電気を通す

熔けたガラスが電気を通す話。 ガラス棒に導線2本を近づけて巻き付けて、その先には、電球、電源スイッチ、電源コンセントと連なる。 ガラス棒をバーナーで熱すると電球のあかりが灯り、電気が流れていることが見て取れる。 このとき、熔けたガラス棒をバーナーから放しても、ガラスは赤く発光しつつ、電気を流し続ける様子が観察される。 この実験は、ヤケドと感電に注意。

[ 動画 1.2Mb 30秒 ]

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芦澤満先生

2,物体の空中衝突:モンキーハンティング

モンキーハンティングの実験の工夫の紹介。 圧縮空気は口で吹くことが無いので、コロナ時代に対応している。 砲弾の飛び出しでヒモが外れる工夫に技あり。 材料はホームセンターで調達できるとのこと。

[ 動画 873kB 3秒 ]

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パイプにホースを繋げる。このとき、照準がズレないように繋げるのが難しい。

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全体像。圧縮空気は足踏みポンプで送りだす。

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砲弾がパイプ後端で止まる工夫

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砲弾の飛び出しにより、ヒモが外れる工夫

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砲弾は、チョークにビニールテープを巻いて、太さを調節したもの

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使用後の砕けた砲弾

3,シャボン玉レシピ

シャボン玉溶液の作りかた3通りの紹介。グアーガムを使う点が斬新。 下記レシピにある2番目のシャボン液が最も有効とのこと。グアーガムは 通販 で買えるそうだ。作りかたの詳細は下記レシピを参照のこと。

[ レシピ(pdf 144kb) , プリント(pdf 3.9Mb) ]

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シャボン液の材料

4,電子工作物の紹介

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リモコン(送信機)とラジコン(受信機)にそれぞれmicro:bit(マイクロコンピューター)が入っており,それぞれにスクラッチでプログラムを書いてインストールしている。 加速度(3軸),温度,光,コンパス(地磁気),静電気のセンサーが本体に組み込まれている。

注目したいのはこのスクラッチでに機械学習機能が搭載されていること。 初心者向けのコードにもAIが入っているのには驚いたそうです。

4. 飯川大輔先生(えりも高校)

運動の第二法則を確かめる実験の改良

台車を手で一定の力で引っ張るのは、かなり難しい。 そこで台車と重りを滑車を介して軽いヒモで結んで、引かせるのだけれども、 重りの質量Mも慣性に加わるので、a-F グラフを作成する方法が複雑になってしまう。

ma=F
Ma=Mg-F

そこで、ニュートンばね秤をヒモの途中に配し、直接にヒモの張力を測る工夫をした。 移動する目盛りを読みとるのは難しいが、動画に撮影してその動画を見る事で解決。 台車位置の記録は従来通りの記録タイマーを用いた。

学生が実際に測定したデータの例と、そのデータが処理される様子をプリントで確認した。

飯川大輔先生
飯川大輔先生

装置
装置

[ プリント(pdf 1.9Mb) ]

5. 八若秀俊先生(士別東高校)

単元の内容に沿ったホームページの紹介

「科学と人間生活」の授業の中で、ウェブページをうまく活用する話。 令和2~4年度には、 授業に ClassiGoogleclassroom , Google Forms 等を活用するなどICTを有効活用した授業をしてきたのだけれども、 今年度、現在の勤務校に移ってからは校内Wi-Fiが使えないなどの苦労話なども伺えた。 ホームページの該当する部分を印刷して生徒に配布したとのこと。

八若秀俊先生
八若秀俊先生

現在の勤務校での「科学と人間生活」の概要と、今年度具体的に使用したホームページ


以上です

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