2006年度 第1回 物理交流会 報告

html作成:田端 修

日 時:5月13日(土) 14:00〜17:00ごろ

場 所:理科センター(物理実験室) 

参加者は以下の13名の方でした。

長 谷川 誠(千歳科学技術大学)、四方 周輔(北海道東海大学)、永田 敏夫(厚真)、中司 展人(butukura)、鶴岡 森昭(札幌清田)、福田 敦 (釧路工業)、本間 友明(旭川明成)、大屋 泰宏(岩見沢緑陵)、伊藤 新一郎(札幌西)、菅原 陽(小樽工業)、高橋 尚紀(理科センター)、三条  歩(理科センター)、佐藤  健(札幌啓成)

<内容>

1.四方周輔(北海道東海大学) 電動歯ブラシで固有振動を見つけよう

2.永田敏夫(厚真高校) stray cat,齋藤孝先生の単極モーターの改良バージョンを報告

3.福田 敦(釧路工業) 釘トランスによる「家電用電力計」

4.高橋 尚紀(理科センター)

北海道における理科教育の充実を図るための調査研究

−第2回 本道の理科教育に関する実態調査−報告

5.三条 歩(理科センター)

 かんてんレンズ、LEDを使った光通信、圧縮発火器

6.菅原  陽(小樽工業) キャンドルナイト関連イベント「おもしろ科学実験ショー&星空観察会」

1.四方周輔(北海道東海大学)

○電動歯ブラシで固有振動を見つけよう

電動歯ブラシでひもの振動を起こして,どのような波長の振動が実現するかを調べて見よう。

用意するもの

電動歯ブラシ  ビー玉(重り)  ビニール袋  ひも  ワッシャー  スケール(定規,コンベックス)

方法

①電動歯ブラシの先端に穴が空いています。この穴にひもを通します。

②ひもの先端にワッシャーをつけ,重りを入れたビニール袋を引っかけます。

③重りをぶら下げ電動歯ブラシのスイッチを入れ振動させます。

④ ひもの長さが短い方から始めて,長さを調節して振幅が一番大きくなるところを見つけます。この振動が一番大きくなる状態を,ひもが電動歯ブラシの振動に共 振している,といいます。このときのひもの長さをスケールで測るか,A3判くらいの大きな紙で共振の長さ分のところに折り目を付けます。

⑤次に重りのビー玉を倍の数だけ入れ,ひもに加わる張力を倍増させます。

⑥前と同じように,振幅が最大になるひもの長さを求めます。この長さをスケールで測るか,最初の重りの時に折り目を付けたA3判の紙の対角線の長さと比較します。

不思議はどこだ

・ ひもの長さがどれだけでも,電動歯ブラシ自身は振動しています。しかし,ひもの方はある特定の長さにならないと大きく振動しません。これはなぜでしょうか。

・ 張力を倍にしたときにひもが共振する長さは,もとの共振する長さの何倍でしょうか。

2.永田敏夫(厚真高校)

 AAPT(全米物理教師の会)06年5月号に、岐阜物理サークルの投稿した、単極モーターの記事が載っていたので、実際にデモンストレーションをして、追実験をしました。

理 センの高橋室長が、20センチ角の厚さ1ミリ程度の銅板と単4乾電池と直径1センチ厚さ5ミリ程度のネオジウム磁石を用意して、乾電池の両極をネオジウム 磁石の向きを同じにしてくっつけ、アルコールでネオジウム磁石を拭いて、銅板上に置いたところ、変形型単極モータが回転しながら走り出しました。乾電池は 相当大電流が流れたようで、熱くなっていました。

 この実験は、1999年に齋藤孝先生が開発演示したもので、引用に齋藤先生の名前が出ていましたので、特に紹介しました。

3.福田 敦(釧路工業)

○釘トランスによる「家電用電力計」

 釘トランスによる「家電用電力計」を検討した。本教材は北理研の研究助成を得たもので、交流と変圧器の学習、ダイオードやコンデンサーの学習に役立てる意図で開発したものである。

  仕組みは次の通りである。ドライヤーなど大電流を使用している家電の電気コードに、鉄釘を芯にしたトランスを挿入する。すると家電の消費電力に応じて、二 次コイル側から電力を取り出すことができる。そして二次コイルからの出力を直流に整流し、メーターを振らせる仕組みである。1セット300~500円くら いで作成できる。

 本教材について以下のような議論が行われた。

(1) 使用電力に応じてきちんとメーターが振れているのだが、オシロスコープで確認してみたところ、実は十分な整流がされていないことがわかった。原因はコンデ ンサー0.1mFの容量不足と思われる。これを1F程度の大容量コンデンサに替えたところ良好に平滑された。しかし今度は放電に時間がかかるため、通電を 切った後でもメーターが振れっぱなしになってしまい、電力計としては機能しなくなった。

(注:そもそもこの教材は、交流を直流に平滑する事それ自体を目的としていない。実際のところコンデンサー無しで、ダイオード1本だけでもメーターを安定に振らせることは可能である。)

(2)ドライヤーなどモーターの家電を使用するとノイズが入りやすい。電球を使用した方がよい。

(3)整流のための回路はメーターの裏側にむき出しで接続している。パーツのつながりが明快で良い。

(4)教材1つが稼働するのに1200Wの電力を消費するのでは、実験室で生徒実験できない。例えば生徒一人あたり電球1つで実施できるようにするなど、改良が必要。

 今回の検討を参考に、本教材を再構成し授業に役立てたいと思う。

4.高橋 尚紀(北海道立理科教育センター)

○北海道における理科教育の充実を図るための調査研究
−第2回 本道の理科教育に関する実態調査− 報告

(1)目的

理科に対する意識調査を行い,この2年間の経年変化を分析することで,北海道の児 童生徒の現状と理科教育の課題を明らかにし,今後の当センターにおける事業の方向性 や改善の根拠等を探ることとした。

(2)調査期間

平成17年3月中旬〜平成17年4月下旬

(3)調査対象

北海道内 小学校70校 中学校30校 高等学校 59校
小学校4年生 1154名  小学校6年生 1110名
中学校2年生 1038名  高校2年生 1903名
小学校教諭 88名 中学校教諭 25名  高等学校教諭 69名

(4)生徒に対する調査結果

 a.理科が好きかどうか

 理科が大好きと好きをあわせた割合は、学年を追うごとに少なくなっていく傾向に  ある。北海道は全国平均に比べ理科が好きな児童生徒の割合が高い。第1回目の調査に比べ、第2回目が若干割合が増えている。

 b.理科が好きな理由

 理科が好きな理由のトップは、「観察や実験が楽しいから」である。続いて、「知らないことがわかるから」、「学習する内容がおもしろいから」が続く。

 c.理科がきらいな理由

  小学校4年生と6年生では、「難しいことが多いから」が6割をしめる。「観察・  実験が苦手だから」が4割程度ある。中学校2年生と高校2年生では、 「計算問題がわかりにくいから」が6割以上で最も割合が高く、「難しい用語や記号が多いから」  (6割程度)、「授業がよくわからないから」(6割弱) と続く。  

d.とくいまたは好きなもの

 小学校4年生、6年生では物理分野が最も高い割合を示している。逆に中学校2年  生では物理分野が苦手の筆頭にあがり、高校2年生では物理分野と化学分野が苦手の割合が高い。

e.どのような授業がよいか(高校2年生)

 7割が「観察・実験を多く取り入れた授業」と回答している。続いて5割程度が「コンピュータやビデオを取り入れた授業」と回答している。

f.何が大切か

 「国語の成績がよいこと」、「社会の成績がよいこと」の割合は、どの学年・学校種でも8割から9割が大切と回答している。「数学の成績がよいこと」、「理科の成績がよいこと」は学年・学校種を追うごとに割合が低下している。

g.その他

 「理科の勉強は楽しい思う」と回答した割合は学年を追うごとに低下し、「理科の勉強は退屈と思う」と回答した割合は学年を追うごとに増えている。また、「理科の勉強はやさしいと思う」、「理科は生活の中で大切だと思う」と回答した割合も学年を追うごとに低下している。

(5)教員に対する調査結果

a.教師が見せる実験の回数

月に1〜3回程度がどの学校種で5割を占める。

b.理科の授業でコンピュータを使う回数

高校では6割以上が使っていない。

c.理科の指導で力をいれていること

「科学に興味関心を持たせるようにする」(8割)、「科学的事実や原理を理解させる」(7割)、「日常生活での科学の重要性を認識させる」(7割)であった。

d.理科好きな児童生徒を育てるために取り組むべきこと

「身近な自然現象と学習を関連づける」と回答した割合が8割、「観察や実験など体験的な学習を重視する」と回答した割合が7割であった。

e.研修について

  研修講座の利用回数は年1〜2回lが4割、数年に1回が3割であった。「理科に関する研修や研究の上で重要だと考えること」では、「理科教育センターの研 修講座に参加」が6割で最も高い割合だった。「理科に関する研修や研究で必要としている  情報」では、「観察・実験の教材開発」との回答が7割であっ た。

f.指導が難しいと感じる学習内容

物理分野の割合が高い。

5.三条 歩(理科センター)

○寒天レンズ

※昨年度の理科アドバンス講座で,滝川高の大屋先生と湧別高の伊與田先生が研究された内容です。 

・寒天レンズの利点は、①レンズ中の光路が見える,②いろいろな形のレンズか作れる(フレネル  レンズも可能)などです。衛生面を考えなければ,食べてもおいしいです(笑)。

・寒天は,500gの水に粉寒天4gと砂糖100gを溶かして,作ります。理由ははっきりしません  が,砂糖を入れると,寒天の透明度が増し,光路が見やすくなります。

○LEDを使った光通信

 ・コイルの自己誘導で使える教材です。

 ・ LEDライト(100円ショップで購入)の発光ダイオード(規格は不明)とボタン電池,自作の コイル(4cmの釘に,太さ0.2mmのエナメル線を 300回巻いたもの)を使って(図1),LE Dの光をラジオの音声で変調する。その光をクリスタルイヤホーンに接続した光電池(図2)に当てると,クリ スタルイヤホーンからラジオの音声が聞こえます。


    図1 送信器    図2 受信器

  ※交流会の中で「変調は抵抗やコンデンサーでも可能」とアドバイスをいただきました。今後,変調される仕組みのちがいから,抵抗,コイル,コンデンサーのはたらきを考えさせる教材に発展させたいと考えています。

○圧気発火器

・仕事とエネルギーで使える教材です。

・アクリル管,ラミン丸棒,ゴム栓(03号;2個),ゴム栓(16号;1個)で自作できます。材料費は500円以下です。

・ワセリンをゴム栓(03号を加工したもの)にたっぷり塗り,アクリル管内を数回通して,アクリル管の内部にワセリンをたっぷり塗るのがポイントです。

図3 ゴム栓(03号)の加工
図4 ゴム栓(16号)の加工
図5 圧気発火器


6.菅原 陽(小樽工業)

○キャンドルナイト関連イベント「おもしろ科学実験ショー&星空観察会」について

1 日時・場所

(1) 平成18年6月16日(金) 琴似小学校体育館
(2) 平成18年6月21日(水) 二十四軒小学校体育館

2 実施協力団体

北海道科学の祭典実行委員会(連絡責任者 菅原教諭)
札幌市青少年科学館

3 内容・要確認事項等

 (1) 特大熱気球

ゴミ袋の素材を特注で発注して作成します。
ふくらますだけで1時間程度かかりますが、浮力や作成方法を説明しながら直径8メートルのカラフルな気球が体育館の中央に浮かばせる過程を見るのは一見に値します。
  【必要物品等】
① 大型熱バーナー(暖房用):電気式の場合、コンセントワット数確認
② 補助スタッフ4人:解放部2、吊り上げ1
③ 脚立
④ 天井高さ確認
⑤ 熱気球製作:3人×6時間、作業領域12m廊下

(2) 空気鉄砲

穴を空けた段ボール箱をたたいて発生する波動を、スモーク発生器を用いて見る。
【必要物品等】
①スモーク発生器(科学の祭典実行委員会用意)
②火災報知機(煙感知式)の確認

(3) ストロボ・アクション

ストロボ装置で動きを分解して見るというものです。
暗くなったら体育館で説明や実演をし、来場者も自分や他の人の行動を直に見ることができます。
[外では水道水をホースでアーチを作り、その動きを見ることもできます。]
【必要物品等】
① ストロボ装置 2台
② 水道ホース、ホース固定器具(脚立等)

4 タイムスケジュール

18:30 あいさつ・注意事項説明等
18:35 熱気球・バーナー点火、浮力等原理説明
18:50 空気砲
19:10 ストロボ・アクション(屋内)
19:30 熱気球・浮遊
19:45 ストロボ・アクション(屋外)
20:00 星空観察会

以上です。

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